起業を考えて事業の内容が決まったら、次に考えるのは「屋号」や「お店の名前(店名)」、「ブランド名」です。
でも、どんな名前にしたら良いか迷いますよね。
- オシャレで格好良い名前にしたい!
- インパクトあるネーミングにしたい!
- 事業への想いを表現したい!
- こだわりを伝えるものにしたい!
- みんなに覚えてもらいやすい名前にしたい!
- お客様に愛される名前にしたい!
こうした想いを持って考え始めるとなかなか「コレ!」と決まらないものです。
私もこれまで、会社の設立時、サービスのスタート時、レンタルスペースの開業時、そしてネットショップの店名などなど・・・何回もネーミングで悩みました。
そして、悩み抜いて名前を付けたものの、後になって「失敗したなぁ・・・」と思う名前もありますし「予想以上にナイスなネーミングだった!」と思うことも。
そこで今回は、個人事業主の屋号や店舗の名前、ブランド名などの名前の付け方(ネーミング)について、名付けの際に注意したいポイントや名前を発想する際のアイデアについてお伝えします。
- 個人事業主の「屋号」をどうしたら良いか困っている方
- お店の名前やブランド名のネーミングの注意事項を知りたい方
- 店舗名や会社名について良い名前が浮かばなくてお悩み中の方
個人事業主の屋号について
ネーミング(名付け)と言っても、商品やお店、ブランドなど、様々な対象があります。
そこで、最初に個人が起業する際に考える「個人事業主の屋号」について解説します。
屋号とは、個人事業主の人が使うビジネス上の名前のことで、法人の会社名にあたるものです。
税務署に提出する個人事業の開業届出書にも「屋号欄」があり、そこに決めた屋号を書いて申請します。
そして確定申告の際にはその屋号を記入します。
開業届の書き方はこちらの記事で詳しく解説しています

Q:屋号って絶対につけないといけないの?
開業時に個人事業主の屋号は絶対に決めなければいけないのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません!
フリーランスで個人名で働く方などの場合は、不要であれば屋号をつけなくても構いません。
私も個人事業の開業届けを提出した際には「屋号欄」は空欄のままで提出しました。
ただし、店舗を持つ方やクリエイターでブランディングをしていきたいと思っている方は、屋号があったほうが良いでしょう。
お客様に個人名でなく、店名・ブランド名で覚えてもらえますし、屋号があれば屋号名義で銀行口座を持つこともできます。
その際は店名やブランド名を屋号にすると良いでしょう。
Q:いったん決めた屋号って変更できるの?
いったん決めた屋号でも容易に変更ができます。
変更の届出は不要で手続きはいりません。
変更した屋号は確定申告書の時に屋号欄に記載すれば変更したことになります。
私もレンタルスペースを開業する際、当初は屋号を決めずに開業届けを出しましたが、そのあと店舗名を「みずいろ会館」と決めたので、翌年の確定申告書から屋号欄に「みずいろ会館」と記載しました。
もし、どうしても屋号を変えたことを書類に残したい方は、再度開業届けを出す方法があります。
屋号をつける時の注意事項・ネーミングのルール
屋号にはいくつかの制限・注意点があります。
せっかく考えた名前が本来つけてはいけないものだったら困りますよね。
ですから事前に注意点を知ったうえで、あなたらしい屋号を考えてみてください。
屋号の名づけに使用NGなワード
屋号をつける際に、使ってはいけないNGワードがいくつかあります。
まず、〇〇株式会社や○○法人、〇〇株式会社といった「会社」を連想させるものは使うことができません。
○○カンパニーや〇〇コーポレーションなど、会社を英語で表現した文言も使用できません。
さらに、〇〇銀行や〇〇保険、○○証券など、特定業種名も付けることができません。
同じ屋号の店舗が無いか確認しよう
屋号には法的な拘束力が無いため、他の人と同じ屋号をつけることが可能です。
でも、同じ屋号の店舗が近隣にあるとお客様が混乱したり誤解するかもしれませんし、そうなったらあなたにとっても不利になってしまいます。
ですから、インターネットで同じ屋号・類似の屋号が近所にいないか事前に確認してみましょう。
なお、個人事業主の屋号の場合は、ネットで調べるくらいしかできませんが、会社の商号(法人にとって屋号に該当するもの)は、こちらのオンライン登記情報検索サービスで商号調査をすることができます。
※オンライン登記情報検索サービスは、オンラインで登記事項証明書の交付請求や登記の申請をする際に「登記・供託オンライン申請システム」で会社・法人の商号や名称を検索することができるサービスです。具体的には『登記ねっとかんたん証明書請求』のサイトから検索をします。(事前の登録が必要)
商標登録されている名前の屋号はNG
既にほかの人が『商標登録』をした名前を屋号につけることはできません。



商標とは、自分の商品・サービスと他人の物を区別するために使用するマークのことです。
商標は「マーク」と「使用する商品・サービス」の2つをセットで特許庁に登録をします。
商標登録されているものと同じジャンルで屋号をつけてしまうと、商標登録をしている企業などから差止請求や損害賠償請求を受ける可能性があります。
そうならないよう、つけようと思っている屋号が既に商標登録されていないか事前に確認しましょう。
登録されている商標は、特許情報プラットフォーム の商標検索で確認ができます。
例えばこのサイトで「ユニクロ」と検索すると 株式会社ファーストリテイリング がその商標を持っていることが分かります。こちら。
商標が登録されている区分を確認すると「被服の小売り」から始まって「織物及び寝具類の小売」「履物の小売」「かばん類及び袋物の小売」「身の回り品の小売」「化粧品・歯磨き及びせっけん類」「薬剤及び医療補助品の小売」などなど。
幅広いジャンルに渡って販売する商品・サービスが指定されています。
ですから、衣料品以外の販売でもその名前を使うことはほとんどできないと言っても良いでしょう。



そんな有名な店名をあえて使う方はいないと思いますが一例としてご紹介しました。
長く愛されて成功するネーミング・名づけのアイデア発想法
それでは、実際にネーミングを考えてみましょう。
屋号や店名、ブランド名は基本的には末永くお付き合いする名前になるので、じっくり慎重に!
なお、先に挙げた注意点を守れば、屋号は割と自由につけることが可能です。
漢字やひらがな、カタカナ、ローマ字、一部の記号(&・など)も使えますので、ぜひオリジナリティ溢れる、あなたらしい、そしてみんなから愛される名前を考えましょう!
名前を発想する際のアイデアを5つご紹介します。
アイデア①:読みやすく検索されやすい名前にする
店名やブランド名は、想い入れが強くなるのはもちろんですし、自分だけの素敵な名前にしたい!という気持ちはよく分かります。
特にサロン名やブランド名の場合、オシャレな名前にしたいがために英語やフランス語、イタリア語などの外国語を使用しがちです。
そんな時、難しくて読みにくいネーミングには要注意です。
この写真は、以前に弊社で主催したママイベントの出店者さんのお名前を掲載したパンフレットです。
見事なまでにローマ字のオンパレード(笑)。
日本語の店名は「トリネコ舎」さん、「紙ファイル」さんくらいで、どうやって読んだらいいのか分からない方もいらっしゃいますね(笑)。
想いが詰まっているのはわかりますが、お客様からしてみたら「何て読むの?」となってしまいます。
起業して間もない時期は、その存在を知ってもらうことが大切ですから、分かりやすい名前、読みやすい名前であるほうが有利です。
特にこうしたイベントでは後で追加注文をしたいとか修理をお願いしたいお客様から連絡が入ることもあります。
そんな時に、自分のお店を探してもらう手段はネットの「検索」なのに、読みにくい店名では検索をしてもらえません。
さらに、ほとんどの人がスマホで検索しますが、その場合にローマ字ばかりの長い店名を入力するのは面倒です。
まずは知ってもらわないと始まりませんから、読みやすい&検索されやすい名前を検討してみてください。
アイデア②:商品やサービスがイメージできるものにする
屋号や店舗の名前に、販売している商品や取り扱っているサービスの名前を入れるのも、よく使われる方法です。
例えば、アロマセラピーのサロンであれば「アロマ〇〇」や「リラク〇〇」。
パン屋さんであれば「ベーカリー〇〇」や「ブーランジュリー〇〇」というもので、これだと、何のお店か一発でお客様に伝わります。
飲食店では「焼肉〇〇」や「ラーメン〇〇」、「〇〇コーヒー」など取り扱う商品ジャンルを店名に入れるお店が多くあります。
例えば、食べログでラーメン・つけ麺店の全国人気ランキングの上位20店を見てみると、「中華そば」「麺処」「ラーメン」「そば」などラーメンを表す文字が入っている店名が20店舗中15店もありました。(2024年3月27日検索)


飲食店のなかでもラーメンは競争が激しい分野。
だからこそ、取り扱っている商品名を店名に入れて分かりやすくしているのでしょう。
また、直接的な取り扱い商品・サービス名を入れなくても、イメージが伝わる表現を使う方法もあります。
例えばオノマトペ 。
リラクゼーション系であれば「もみもみ」や「うっとり」「ふんわり」「ほっこり」といった表現をネーミングに取り入れることで、そのサービスを利用した時のイメージや印象を表現することができます。
アイデア③:成り立ちや夢、目標、コンセプトを名前にする
起業したあと、必ず聞かれるのが店名・屋号・ブランド名の「由来」です。
一見すると何の意味か分からない名前であっても、その理由や由来を聞いて納得することで、親身に感じたりファンになってくれることがあるでしょう。
例えば、スーパーのAEON(イオン)。
これは、ラテン語で「永遠」をあらわす言葉とのこと。お客さまへの貢献を永遠の使命とし、その使命を果たすなかで、永遠に発展と繁栄を続けていくとの願いを込めた名前だそうです。
参照:よくあるご質問 | イオンフィナンシャルサービス株式会社
また、ジュエリーのブランドで人気の4℃。
氷が張った水の底の温度を表していて、唯一魚が生息できる安息の場、うるおいそのものを意味するそうです。 「水のようでありたい」という想いを表現したブランド名とのことです。
参照:4℃
このように、あなたの夢や目標、理念、願いなどを込めた名前をぜひ考えてみましょう。
アイデア④:短めの文字数で覚えやすくする
「あのお店の名前、なんだっけ??」
お店の雰囲気や出された料理は覚えているものの店名だけは覚えていない、なんてことは誰しも経験があるのではないでしょうか。
覚えやすい名前のためには、文字数をできるだけ短くすることが有効です。
具体的には2文字から7文字以内にすると良いでしょう。
感覚的には4文字の名前は覚えやすく、大手企業でも採用されているところが多いようです。
例えば、ユニクロ、アスクル、吉野家、ぐるなび、メルカリ・・・どれも4文字ですよね。
人の名前(苗字)も4文字が多いこともあって親しみやすいのでしょう(←私の憶測です)。
また、ちょっと長い名前でも、4文字に省略できると覚えてもらいやすくなります。
例えば・・・
ソフトバンクは「ソフバン」
Yahoo!オークションは「ヤフオク」
プレイステーションは「プレステ」
ベルサイユのばらは「ベルばら」
どれも4文字に略されて広く浸透しています。
ちなみに、私がオーナーのレンタルスペースの名前は「みずいろ会館」。
8文字ですが、利用者からは「みずかん」と4文字に略して呼ばれています。
アイデア⑤:自分の名前や地名を入れる
想い入れのある名前と言えば、自分の名前が一番ですよね。
あなた自身がお店の顔であるのなら、名前や愛称を入れてみるのも良いでしょう。
「まみカフェ」、「トモズキッチン」、「サロンMIHO」のように名前を入れると親しみやすくなります。
またお客様からは「このカフェのオーナーさんは、まみさんっていうんだろうな」とすぐに覚えてもらえます。
そして、地名を名前に入れることで地域の方から親近感を持たれるようにもなります。
「千葉の焼き菓子屋さん パティスリー・リエ」といった名前であれば、地元に根差した親しみやすさが表現できますね。
ネーミングのアイデアがどうしても浮かばない・・・!
そんな時には外部のサービスを利用するのもアリ。
プロのコピーライターからもアイデアを得られます!
最後のチェックポイント
色々悩んだ結果「店名はこれにしよう!」と決めた場合であっても、すぐに決めて使うのではなく、以下の点をチェックをしてみましょう
- 声に出した時に言いやすいか
- 文字として書いた時に書きやすいか
- 聞いた時に語感が良いか
そして、決めた名前は周囲の人に意見を聞いてみましょう。
一つ私が経験した失敗例をご紹介します。
弊社で運営する介護用品のネットショップは「介護ショップちとせ」という店名です。
スタッフと一生懸命考えて、介護用品を扱っていると分かるように取扱品目を入れ、文字数が少なくて長寿をイメージする「ちとせ」としました。
短くて覚えやすいし、イメージも良いし、スタッフ全員が「良い名付けができた!」と思っていたのですが、実はこの名前、口に出したら意外と言いにくいのです。
電話の応対で「お電話ありがとうございます。介護ショップちとせです!」と言う際に、どうしても「プ」と「ち」のところで噛んでしまいがち。



私だけでなくスタッフもよく噛んでます(笑)
後で「失敗したなぁ~」と後悔しても、既にこの名前で運営スタートしているので、変更もできずに今に至っています。
ですから、何度も声に出して言ってみる、というのはぜひやってみてください。
まとめ
屋号や店名の名づけ・ネーミングに正解はありません。
以前だったらNGとされていた表現の店名が「面白い!」とネットでバズってお客様が遠方からも来るようになった、という例も多々あります。
例えば「くそオヤジ最後のひとふり」。
飲食店の店名で「くそ」というのはちょっと抵抗感がありますよね。
実は、とっても人気のラーメン屋さん。
この会社は、ほかにも「世界一暇なラーメン屋」とか「人類みな麺類」など、ちょっと面白いネーミングのブランド名で店舗展開をしています。
変わった名前の高級食パン店などもありますが、面白い名前のお店に行ったら写真に撮ってSNSでシェアしたくなりますよね。
それを見た人が興味を持って来店し、またシェアされてお客様が広がっていくのが最近の傾向です。
もちろん、名前だけ面白くても本質の商品やサービスが良くなかったらブームも一時で終わってしまいます。
名前はあくまでも他の商品やサービスと区別し、お客様に認識してもらうためのものですから、名前負け、看板倒れにならないようにすることが大切です。
どんな名前がいいか、いっぱい悩んであれこれ迷って、最後にはあなたの想いを込めたネーミングにしてみてください。
ネーミングと一緒に考えたい『ブランディング』についてはこちらの記事で解説しています。


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