起業する方のなかで店舗を構えて設備や機械などが必要な飲食店や美容業などの場合は、最初にまとまった金額のお金・資金が必要になりますよね。
最近ではクラウドファンディングなど資金調達の方法も多様化していますが、やはり多くの方が検討するのは銀行などの金融機関からお金を借りる『融資』ではないでしょうか。
そこで今回は、女性が起業する時に融資を利用する際のポイントや活用できる融資制度をご紹介します。
金融機関の「融資」とは
そもそも「融資」とは何のことでしょうか?
融資とは、銀行や信用金庫などの金融機関から、特定の使い道のためにお金を借りることを指します。
住宅を購入する時の住宅ローンや車のローンなどで金融機関からの融資を利用した方もいらっしゃるかもしれませんね。
そうした個人向けの融資とは別に、企業や個人事業者向けに、新しく事業を始めたい時(起業時)や開業・開店の時、そして事業拡大などの際に金融機関からお金を借り入れすることができるのです。
なお、融資でも国や地方自治体が関与する公的機関からの融資を『公的融資』、そして銀行や消費者金融などからの融資を『 民間融資 』と呼びます。
一般的に公的融資のほうが金利が低いのですが、審査が民間よりも厳しいという特徴があります。
融資を受けられる金融機関
事業用の融資を受ける場合、どんな金融機関から借り入れができるのでしょうか。
皆さんが「金融機関」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほフィナンシャルグループなどのようなメガバンクと呼ばれる大手都市銀行かもしれませんね。
大手都市銀行も企業への融資は行っていますが、初めて事業を立ち上げる起業女性に対して融資してくれる可能性はほとんどゼロに近いでしょう。
また、みなさんにとって身近な金融機関といえば、各都道府県を基盤に展開している地方銀行を思い浮かべる方も多いかもしれません。地域密着で支店を展開しているので、口座をお持ちの方も多いかと思います。
こうした地方銀行は、先ほどのメガバンクと比べて地元の企業やその地域で創業しようとする方に積極的に融資をしてくれる傾向があります。
地方銀行よりもっと地域密着型なのが信用金庫です。
規模の小さい事業者に対して融資を行っているので、女性の小さな起業でも借り入れがしやすい金融機関といえるでしょう。
そして、政府系と呼ばれる金融機関の日本政策金融公庫。
預金口座が無い(お金を預からない)金融機関のため、一般の人にはなじみが無いかもしれませんが、新たな事業を始める人向けの融資制度があり、多くの起業家・小規模事業者が利用している金融機関です。
ひと口に融資をしてくれる金融機関といっても、これだけの種類があるのです。
起業時に融資を利用するメリット・デメリット
女性は起業をする際「借金をしてまでやりたくない」と言う方も多く、自己資金の範囲内で事業をスタートする傾向にあります。
もちろん、お金を借りるか・借りないかは個人の自由ですから、自己資金だけで起業するのも良いのですが、自己資金の金額という制約ができてしまうことで、やりたかったことが出来ないのは残念なことです。
自分がやりたい事業に対してお金が足りない場合、そこで諦めてしまうのではなく、金融機関から融資を受けることで夢を実現出来ることもあります。
では、起業女性が融資を受ける場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
メリットとデメリットを理解したうえで、本当に融資が必要かどうかもよく検討してみて下さい。
起業時に融資を利用するメリット
起業時に融資を受けるメリットは以下のようなものがあります。
①起業の際に不足した資金を補える
やりたい事や起業の夢があっても、お金が足りなくて断念したり、予定よりも規模を縮小してスタートするのは悔しいですよね。
特に主婦の方などは子どもや家庭があるため、自分で起業のための資金を十分用意できない場合が少なくありません。
そういう時に融資を受けて不足分の資金を補うことで、やりたい事が実現できる可能性が高まり、夢見た通りの起業や開業、開店ができるようになります。
②安定経営や早期の事業成長が可能となる
通常は売り上げから回収できる資金で事業を運営をしていかなければなりませんが、起業当初は売り上げが安定しなかったり、売上自体少なかったりするので苦しい運営を強いられることがあります。
しかし、借り入れをして経営資金的に余裕を持って事業を始めることで、目先の収益ばかりにこだわらず長期的視点に立った安定的な経営が可能になります。
また資金があれば在庫を十分確保したり、人材育成などに投資することなどの対応ができるため、事業機会の損失を減らして早期に事業を軌道に乗せることが可能になります。
創業時に融資を利用するデメリット
融資を受けるデメリットは以下の通りです。
①返済が必要
当然ですが、補助金や助成金と違って融資は返済が必要です。月々、元金に利息を加えた額を返済することが求められます。
本来、返済は税引き後の利益分が返済原資となりますが、起業当初は利益が十分に出ない可能性も高いうえ、返済をすることで資金が貯まりにくいこともあります。
②お財布の紐が緩みやすい
起業当初に融資によってまとまったお金が手に入ると、資金的に余裕が出て、それまで購入を我慢していた備品などを買ってしまう、というのはよくある話です。
自由に使えるお金だからと言って無駄な出費が増えてしまったら本末転倒なので注意しましょう。
起業時に融資を受ける時の手順
では、実際に融資を受けたいと思ったらどうしたら良いのでしょうか?
融資を申し込むまでの一般的な流れについてご紹介します。
①資金調達が必要な金額を考える
まず、起業にいくら必要で、自分で用意できる自己資金がどのくらいあるのか、足りない額は幾らなのかを計算してみましょう。
店舗の取得費や内装、設備や機械といった開業当初に必要な初期投資はもちろん、その後の運転資金も含めて検討します。
そして、不足額のすべてを融資で賄うのか、それとも出資やクラウドファンディングといった他の資金調達方法と併用するのかなども検討しましょう。
②どの融資制度を利用するか検討する
お金を金融機関から借りようと思ったら、いきなり金融機関に行く前に、世の中にはどのような融資制度があるかを調べてみましょう。
国の公的融資は中小企業基盤整備機構が運営するサイトJ-net21の補助金・助成金・融資のページから検索することができます。
また、検索サイトで『起業 融資 〇〇(都道府県名)』と検索すると、都道府県で行っている公的融資制度が見つかると思います。※主に都道府県のサイト内に創業の融資制度が紹介されています。
融資制度の概要や、融資対象者、貸付限度額、利率、保証人や担保、取扱金融機関、そして必要書類などが記載されていますので確認してみて、そのなかからあなたの事業に合った融資制度を探してみましょう。
③融資の相談に行く
どの制度を利用するか決めたら、取り扱いをしている金融機関に相談に行きましょう。
相談に行く時に、事業計画書(創業計画書・ビジネスプラン)を持参すると話がスムーズに進みます。もし、事業計画書等の書類の用意が無くても、まずは相談に行って、次回までにどんな書類を用意したら良いか尋ねてみましょう。
日本政策金融公庫や信用保証協会といったところは公的な機関でもあるうえ、 創業専用の無料相談窓口を用意しているところも多いので、借り入れに対して不安なことを解消するためにも窓口に行って相談してみると良いでしょう。親切に対応してくれるはずですよ。
④借入の申込・可否決定
実際に借り入れを行う段階になったら、申込書と共に 金融機関から指定された必要書類を提出します。
その後、面談や審査を受けて、融資の可否が判断されます。
なお、あなたが地方銀行に融資を申し込んで断られたとしても、それで諦めてはいけません。
一旦断られても、他の地銀や信用金庫、日本政策金融公庫などに行ったら審査が通る可能性はあります。
実際、私自身も地方銀行に融資を依頼して断られた経験がありますが、その後、信用金庫に行ったら借りられたことがあります。
女性が起業時に利用しやすい融資制度
それでは、女性が起業する際に利用しやすい融資制度を二つご紹介します。
女性、若者/シニア起業家支援資金(日本政策金融公庫)
国が100%出資する金融機関の日本政策金融公庫では、国の政策を反映した融資を行っていて、中小企業はもちろん、個人事業主や起業・創業する人を対象とした融資制度が充実しています。
なかでも女性や若者・シニアを対象にした起業のための融資制度が「女性、若者/シニア起業家支援資金」です。
新たに起業する女性もしくは35歳未満か55歳以上の男性の方で創業後おおむね7年以内の方が対象となっています。
融資限度額は7,200万円となっていますが、現実的なところで無担保だと300万円~700万円程度の融資が実行されているようです。
これまで事業の経験が無い方の場合、市中の金融機関では融資を受けることは難しいですが、そういった方でも起業にチャレンジする際に利用できる融資制度となっています。
創業融資( 信用保証協会)
信用保証協会とは、中小企業や個人事業主の方が金融機関からお金を借りる際の「保証人」となってくれる公的な機関です。 47都道府県と4市(横浜市、川崎市、名古屋市、岐阜市) にあって、地域に密着した業務をしています。
保証協会自体は直接融資をしません。
銀行や信用金庫・信用組合からの融資の保証人となってくれるというものです。ただし、保証料を支払う必要があります。保証料は借入金額・保証料率・借入期間・返済方法によって異なります。
融資を受ける場合、信用保証協会と金融機関それぞれの審査があるので、日本政策金融公庫に比べると審査機関が長い傾向があります。
なお、信用保証協会と金融機関に加えて、都道府県や市区町村が連携した「制度融資」を利用する場合は、利子補給(利子の一部や全額を給付する制度)や保証料補助(保証料の一部を補助する制度)などの支援があります。
まとめ
女性でも主婦の方やお子さんのいる方などは借金をすることに抵抗を感じる方も多く、手元の自己資金だけで起業する傾向にあります。
でも、もしあなたが「もう少しお金があれば、本当に実現したい状態ができるのに」と思っているのであれば、不足額を融資で賄うことを検討してみましょう。
ただし、必ず返さなければいけないお金ですから、事前に収支の予測や返済計画を十分考えておくことも大切です。
また「私に銀行がお金を貸してくれるのかな?」と心配される方も多いのですが、債務超過であったり信用情報がブラックの方でなければ、初めての起業でも事業計画がしっかりしていて、金融機関が「この人・この事業であればお金を貸しても大丈夫」と判断したら、融資を受けることができます。
「融資を受けたことで夢が実現できた」という女性もたくさんいます。
ぜひ、資金調達の方法の一つとして検討してみてください。
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