起業のセミナーでいただく質問のなかで「起業する時の資金は幾ら用意したらいいですか?」というのは定番の質問です。
業種や業態、規模などが違えば必要となる資金の額も異なるので、一概に「〇〇円があったら大丈夫」という金額はありません。
例えば、店舗を持たないコンサルタントや講師業、クリエイターなどの場合は数万円~数十万といった少ない金額で起業することができますが、カフェや飲食店、美容室やエステなどの実店舗を構えて営業する場合は、数百万円という単位での資金が必要となります。
そこで、今回は女性起業家に多いカフェなどの飲食店やエステなどの美容系の実店舗を構える際に必要な金額について、その計算方法と費用を抑えるポイントについて解説します。

店舗を構えて起業をしたい女性で
・店舗を持つには幾ら必要なの?
・どうやって店舗にかかる費用を計算したらいいの?
・費用を抑えるにはどうしたらいいの?
といった疑問をお持ちの方はぜひ参考にしてみてください。
▼起業に必要な資金についてはこちらの記事も参考にどうぞ

店舗を構える際にかかる費用項目

飲食店やエステ、美容室などの店舗を構えたいと思ったら、まず最初に、どのようなモノが必要でそれらを用意するのに幾らかかるのかを考えましょう。※ここでは店舗は「物件を借りる」という前提で考えます
店舗を構える際にかかる費用は大きく2つに分かれます
店舗を借りる時にかかる「物件取得費」と店舗の内装や外装のための「内外装工事費」です。
物件取得費は店舗の物件を借りる際に不動産会社に支払う費用。
内外装工事費は借りた物件のリフォームをする際に設計、デザイン、施工の業者に支払う費用です。
それぞれについて、次の項目でもう少し詳しく解説します。
物件取得費の内容と目安の金額
物件取得費とは、店舗物件を借りる際に支払う費用で、保証金(敷金)や礼金、仲介手数料、前家賃などが含まれます。
前の使用者が設置していた厨房設備や内装をそのまま使用する「居抜き物件」の場合は、造作譲渡料などがかかる場合もあります。
以下にそれぞれの項目の目安となる金額について説明します。
項目 | 内容 | 目安金額 |
保証金(敷金) | 住居の「敷金」にあたるもので、借り手が貸主に預けるお金 | 家賃の6か月~10か月程度 |
礼金 | 貸主へのお礼 | 家賃の0~2か月程度 |
仲介手数料 | 不動産会社の手数料 | 家賃の1か月程度 |
前家賃 | 翌月分の家賃の先払い分 | 家賃の1か月+日割り |
造作譲渡料 | 居抜き物件の設備等を譲り受ける費用 | 物件によって異なり0~数百万まで様々 |
家賃(賃料)は立地や面積によって大きく差がありますので、実際に不動産屋さんで確認したり、ネットの賃貸情報でチェックしてみると良いでしょう。
物件を借りる際の注意点
一般的に人通りが多い駅前の繁華街の「一等地」と言われるような場所になればなるほど賃料は高くなります。
人通りが多く売り上げも見込めますが、その分、競合店が多く、高い賃料を毎月支払わなければならないため負担が大きくなります。
一方で、駅から遠い郊外や人通りの少ない裏路地の店舗の場合は賃料が安い分、通りがかりに立ち寄るお客様は見込めません。
高い家賃の一等地か、それとも家賃の安い二番手、三番手にするか、迷いますよね。
用意できる資金が潤沢にない場合は、リスクを考慮して、一等地ではなく二番手、三番手の立地に出店するほうが無難でしょう。
一度店舗を構えたら、そう簡単に移動したりすることはできませんし、家賃は売上が伸びても下がっても毎月支払わなければならない固定費となります。
売上が順調に伸びる前提で収支計画を立てて「これなら高い家賃の物件でも大丈夫」と考えていると、思ったより売上が順調に伸びなかったりした時や、今回のコロナのように突発的な事象が生じた時に大きな痛手を受けてしまいます。
月々の売上計画、収支計画を慎重に考えて、継続して支払いができるかどうか、利益を確保できるかどうかを十分に考慮して出店場所を決めるようにしましょう。
内外装工事費

物件取得費のほかに、店舗の費用としてかかるのが「内外装工事費」です。
内装や外装の工事にかかる費用は、業種や業態、そしてデザイン、面積などで大きく差が生じます。
例えば飲食店の場合は、ガスや電気、水道、空調、給排気などの厨房設備の工事に大きな金額がかかり、坪当たり30万円~50万円(新装)がかかるとされています。
一方で、給排水などの工事が必要ないアパレルショップや雑貨店、学習塾などの店舗の場合は内装工事費は押さえることができ、坪当たり5万~10万程度で済むことが多いようです。
ただし、そうした業種でもデザインに凝って高額な壁紙を使ったり、インテリアや照明などにこだわったりすると費用が高くつきます。
また、物件が居抜きなのかスケルトン(内装が全くない状態)なのかによっても内装費は異なります。
居抜き物件の場合、前の利用者が残していった内装や空調・水回りの設備をそのまま使えるため、費用が抑えられ内装工事の工期も短くてすみます。
ただし、自分の好きなように自由に改装しにくかったり、設備が壊れていた場合は自己責任になってしまいます。
自分の夢の実現に繋がる店舗ですから妥協はしたくないでしょう。
かといって、いくらでもお金が掛けられる状況ではないでしょうから、かかる費用の金額と折り合いをつけながら、目指す店舗を作り上げていきましょう。
内装工事費を抑えるには
内装工事は一般的に数百万円と大きな金額かかるため「できるだけ安く済ませたい」と思いますよね。
内装工事費を抑えるためには幾つか方法がありますのでご紹介します。
①居抜きで使える物件を探す
前の使用者が残している設備や内装がそのまま使える「居抜き物件」だと内装費を抑えることが可能です。特に飲食店で厨房などの設備や機器は高額ですが、それがそのまま使えるとかなり安く費用を抑えることができます。
②複数の業者に見積書を依頼して検討する
内装の業者は1社に決めてしまわずに、何社かに見積りを依頼しましょう。見積額やその内訳を比較することで相場が把握できますし、交渉の際にも活用できます。
③設備や機器はネットや中古品を利用する
設備や機器はネットで購入したり、中古品を利用することで費用を抑えられます。ただし、破損があった場合や、サイズが合わないなどのトラブルもありますので、内装業者と相談しながら決めましょう。
④一部をDIYする
私がレンタルスペースを作った時には、家具をDIYで作ったり、壁や天井などのペンキを自分達で塗ったりして、その分の費用を抑えました。
自分でできそうな部分が無いか内装業者さんに相談してみて、DIYで行う分について値下げの交渉をしてみましょう。

これらは代表的な方法ですが、見積書をもらったら、費用を抑えられる部分がないか業者の方と相談してみてください。
ただし、無理な値下げ要求ばかりするのは禁物です。
気持ちよく仕事をしてもらうためにも、内装業者の方との人間関係は大切にしてくださいね。
まとめ
店舗を構え際の費用は、立地や業種、業態、面積、デザイン、そして居抜きかスケルトンかなどによって大きく異なってきます。
「このタイプのお店なら〇〇円」と一概に説明はできませんが、本記事ではおおまかな必要額について説明しました。
自分の作りたいお店の準備に具体的に幾ら必要になるかは、不動産会社や内装業者に相談しながら見積もってみましょう。
独立して自分の店舗を持つのは起業する人にとって、最初に迎える大きなチャレンジ・意思決定になります。物件の取得から内装までかなりの金額が必要になりますし、拠点となる場所ですから、一度決めたらそう簡単には移動できないからです。
立地によって売上や家賃も変わりますから勢いだけで決めずに、十分に検討してから決めるようにしてください。

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