近年、ゲリラ豪雨や夏の連続猛暑日、大雪などの異常気象が増え、それに伴った自然災害が各地に発生しています。
また新型コロナウィルス感染症などもあって、いつもと同じ日常がずっと続くとは限らない、と身に染みて感じる人が多いのではないでしょうか。
人生は何が起きるか分からないもの。
ですから、そうした危機や危険、事故に対応する「リスクマネジメント」が重要になります。
リスクを回避する方法として「保険に加入」するのが一般的です。
みなさんも生命保険や火災保険、自動車保険など、なんらかの保険に加入していると思います。
同じように、ビジネスに関する保険には加入していますか?
ビジネスにも保険がかけられるんですか?
個人事業主の私も事業保険に入ったほうが良いの?
あまりお金がかかるのはちょっと…
小さい事業であっても保険に加入したほうが良い場合と入らなくても良い場合があります
そこで今回は、事業活動に関する保険について説明するとともに、女性の起業でも保険加入をお勧めする理由について解説します。
- 事業活動に関する保険の概要を知りたい方
- 事業に関する保険に加入をした方が良いかどうかを知りたい方
- 事業に関する保険にはどのようなものがあるか知りたい方
事業活動に関する保険って?
ひと口に『保険』言っても、生命保険や損害保険、そして健康保険や労災保険、雇用保険、介護保険といった社会保険まで、様々なものがあります。
今回は事業活動におけるリスクに対応する「損害保険」、なかでも「賠償責任保険」に焦点を当ててお伝えします。
ビジネスをしていると様々なリスクがありますが、それらのリスクが発生した際に事業活動に関する損害保険に加入していれば補償がされます。
例えば以下のようなものがあります。
- 財産に関する補償
-
店舗などの建物や設備、商品などの財産が火災等で損害が生じた場合のもの
- 休業に関する補償
-
火災や台風などで被災して休業した場合の損失が発生した場合のもの
- 賠償責任に関する補償
-
食中毒や商品による怪我など、提供した商品・サービスを原因とする損害に対するもの
小さなビジネスをしている女性起業家の方に加入をおススメするのが、賠償責任に関する補償をしてくれる「賠償責任保険」です。
私は規模も小さいし、個人事業だし、売り上げもそんなに無いから保険なんて要らないんじゃないかしら?
個人事業でも法人であっても、規模が小さかろうが大きかろうが、お客様に商品・サービスを提供するビジネスをしている限りリスクはあるので、保険加入を検討してみてください。
賠償責任は、起きる確率は低いものの、いったん生じたらその影響は大きくなります。
そのため、事業の存続はもちろん自己破産に至るようなことだって起こり得ます。
だからこそ「私は大丈夫」と過信は禁物。
保険に加入するなどのリスクマネジメントをすることが大切なのです。
賠償責任ってなに?
賠償責任保険の「賠償責任」って何のこと?と思っている方もいるかもしれませんね。
「賠償責任」を辞書で調べるとこんな感じです。
債務不履行や不法行為によって他人の権利・利益を侵害し有形・無形の損害を与えた場合に、生ずる損害を補塡(ほてん)する責任。
もうちょっと分かりやすく言い換えるとこんな意味になります。
事業活動でお客様の物を壊してしまったり、怪我を負わせてしまったり、精神的な苦痛を与えてしまったりした際に、修理や治療にかかった費用をつぐなうこと
女性によくあるビジネスでの損害賠償の例
事業が原因となる損害といっても様々なパターンがあります。
そこで女性の経営者にありがちなビジネスで起こり得る4つの事例をご紹介します。
例1:飲食店・菓子食料品販売・お料理教室など |
例2:アロマ・エステ・ネイル・リラクゼーションなど ・アロマのオイルトリートメントが原因で、皮膚がかぶれて治療が必要になった。 ・施術が原因でお客様に怪我や捻挫などの負傷をさせた。 |
例3:フリーランス 取引先から預かった機密情報が入っていたパソコンを電車に置き忘れて情報が抜き取られ情報漏洩した。 |
例4:手作り作家・クラフト作品 金属製のネックレスをネットで販売したところ、購入したお客様が金属アレルギーを発症してかぶれた。 |
こうしたトラブルって起きそうな内容ですね・・・
そうなんです!
いずれの例も頻繁には起こらないと思いますが、いったん起きたらその影響は甚大です。
2011年に起きた焼き肉チェーン店で生の牛肉(ユッケ)を提供して181人が食中毒を起こして5人が亡くなった事件では1億7千万円の損害賠償の支払いが命じられています。
これは被害の規模も損害賠償金額も大きな事例ですが、いったん集団食中毒が発生したら数千万円の賠償が発生すると言われています。
治療費や慰謝料など損害賠償を請求されるうえ、その噂が広まって閉店に追い込まれたり、最悪の場合は自己破産などの可能性もあるのです。
賠償責任保険に加入する?加入しない?
女性の起業でも起こりうる損害賠償についてイメージができたかと思います。
こうした損害賠償のリスクに対応するのが『賠償責任保険』です。
でも、保険に加入したほうが良いかどうか、どう判断したら良いのでしょうか?
賠償責任保険に加入すべき事業
賠償責任保険に加入すべき事業の代表的な例としては、お客様の身体に直接的に影響する商品・サービスを提供するタイプです。
例えば以下のような業種の方です。
- 飲食店やカフェ、菓子・パン屋さんなど、お客様の口に入るものを提供している方
- お料理教室やお菓子教室、パン教室などを運営されている方
- アロマやエステ、ボディケア、リフレ、ネイル、リラクゼーションなどの施術を行う業種の方
お客様の身体に直接影響を与えるので、万が一の出来事が発生した時には、その被害が大きいからです。
また、以下のようなお客様の物などを預かるタイプの事業の方も加入をお勧めします。
- 修理のために商品を預かる事業の方
- 店舗でサービス提供中にお荷物を預かる事業の方
- ペットのトリミングサロン(ペットを預かる)
- ベビーシッター(お子さんを預かる)
- ハウスクリーニング(家財を預かる)
- 取引先からデータを預かるフリーランスの方
お預かりしたモノ・ペット・家財などに万が一のことがあった場合のことを考慮すると、保険に加入すべきでしょう。
賠償責任保険に加入しなくても良い事業
賠償保険の加入は不要な例は以下のような事業です。
- バッグやポーチなど布小物を作って販売しているハンドメイド作家さん
- プリザーブドフラワーなどの置物・インテリア用品を販売しているクラフト作家さん
ひとり起業で、お客様の身体に影響が無い商品を販売しているような場合です。
販売した制作物に針などの危険物が入っていた、みたいな事故を想定できなくも無いですが、きちんと検品して販売していればそうした事故はほとんど生じないでしょう。
なお、ハンドメイド作家さんの場合、デザインなどの「著作権侵害」を訴えられて損害賠償を求められる可能性もありますが、これもデザインの盗用をしていなければ大丈夫でしょう。
他人に怪我や損害を与えることがほぼ無い、というビジネスであれば損害賠償保険の加入は不要です。
自分の事業内容を考えてみて、少しでも不安があるのであれば保険に加入することを検討しましょう。
損害賠償保険の紹介
賠償責任保険には様々な種類のもの(保険商品)があります。
代表的なものをご紹介します。
- PL保険(生産物賠償責任保険)
-
製造・販売した商品(生産物)を対象とした保険
- 受託者賠償責任保険
-
預かった物を管理する際に生じた事故などのリスクを補償する保険
- 施設賠償責任保険
-
施設の管理や仕事の遂行に伴って生じた事故などのリスクを補償する保険
- 専門職業人賠償責任保険
-
医師や弁護士など専門職業資格を持つ人を対象とする保険
女性の起業に多い業種に絞って、いくつかの保険をご紹介しますので参考にしてみてください。
飲食店・カフェ・キッチンカー・菓子販売・こども食堂など
飲食店・食品販売の場合は食中毒に備える保険は必須です。
食中毒は気を付けていても生じる可能性がありますから、そうしたリスクのためにも必ず保険加入をしておきましょう。
社団法人日本食品衛生協会の「食品営業賠償共済」
http://www.n-shokuei.jp/kyousai/baisyou.html
食品に関わる方は、開業時に保健所から日本食品衛生協会の食品営業賠償共済加入を案内されたことがあるかと思います。
この共済では食中毒や異物混入による怪我などへの損害賠償金や賠償問題解決のための訴訟費用などが補償されます。
業種や補償額によって掛け金が異なります。
なお、日本食品衛生協会では、食品営業賠償共済のほかに、幅広いリスクに対応した「スーパーあんしんフード君」などの共済も用意しています。
USENの「お店のあんしん保険」
https://usen-insurance.com/product/insurance.html
飲食店や理美容院、小売店といった「お店」に特化した保険で、食中毒はもちろん、火災や盗難、給排水設備の事故による水漏れなど幅広いリスクを補償しています。
基本の補償に加えて、飲食業や理美容・サロン、小売業など業種特有のリスクに対応したオプションも用意されています。
料理教室・お菓子教室・パン教室
食品を直接販売してはいないものの、お料理教室系では食中毒を始め様々なリスクがあります。
ですから、ぜひ保険の加入を検討してください。
貝印株式会社のKai House Culinary Artist Club「料理教室賠償責任保険」
https://www.kaihouse.jp/about/
貝印株式会社が運営する“料理家のコンシェルジュ”をコンセプトとしたメンバーズクラブ「Kai House Culinary Artist Club(カイハウス・カリナリーアーティスト・クラブ)」の会員になると三井住友海上火災保険株式会社の料理教室賠償責任保険に加入できます。
フリーランス向けの損害賠償保険
ライターやプログラミング、デザイナーなどのフリーランスの方も様々なリスクがあるので保険加入をお勧めします。
フリーランスに特化した保険がありますので検討してみてください。
GMOクリエイターズネットワーク株式会社の「フリーナンス」
https://freenance.net/
フリーランスやスモールビジネスのオーナー向けに無料の損害賠償保険「フリーナンスあんしん補償」や「フリーナンス即日払い」を提供しています。
損害賠償保険には、仕事中の事故や納品物の欠陥を原因とする事故の補償(最高5,000万円)や情報漏えいや著作権侵害、偶然の事故による納期遅延などを原因とする事故の補償(最高500万円)があります。
プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の「賠償責任保険」
https://www.freelance-jp.org/benefitguide/
独立して活動するプロフェッショナルや、企業に属しながらキャリアを複線で築くパラレルワーカーの有志が主体となって設立された非営利団体「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」に加入すると、賠償責任保険が自動で付帯されます。(年会費1万円)
業務遂行中の対物・対人の事故や情報漏えいや納品物の瑕疵、 著作権侵害や納期遅延などを幅広く補償します。
アロマ・エステ・リラクゼーション・セラピスト・理美容室
アロマやエステ、まつエク、リラクゼーション系の場合、個人で活動されている方も多くいらっしゃいます。
個人の場合、団体(協会)に加入すると自動的に賠償責任保険が付帯され、保険料が割安となります。
手技セラピスト協会の「賠償保険」
https://shugi-therapist.co.jp/
整体やカイロ、足つぼといった手技による施術のセラピストの協会による補償制度です。
年会費14,000円でリラクゼーション業務による事故やサロンに起因する事故を補償します。
ビューティガレージの「サロン店舗賠償保険」
https://www.salonhoken.net/
美容商材総合商社のビューティーガレージが販売するサロン店舗賠償責任保険で、「理美容室・エステ・アロマ・まつげ・ネイル向け」と「リラクゼーション・美容整体・リフレ・フットケア向け」に分かれています。
まとめ:リスクマネジメントは事業を長く続けるために大切です
小さな起業であっても、様々なリスクがあります。
特に食品を提供する事業(飲食店や食品販売、料理教室など)やお客様の身体に直接触れるビジネス(美容系、リラク、アロマなど)は、お客様に対して万が一の事が起こったら損害は計り知れません。
でも、そうしたリスクをきちんとマネジメントすることも起業して事業を続けていくうえでは大切なことです。
心配を抱えながら不安な気持ちでいるより、保険に加入することで安心して事業をできたほうが良いですよね。
きちんと稼げる一人前の女性起業家になるためにも、リスクマネジメントの基本となる保険加入をぜひ検討してみてください。
なお、保険加入を検討する場合、ここでご紹介した以外にも、様々な賠償責任保険、ビジネス保険などがありますので、ご自身の事業にあった保険を探してみてくださいね。
こちらの記事では起業して成功するためのポイントを解説しています。併せてご覧ください。
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