専業主婦の方やパート勤務のママが起業しようと思った時に気になるのが「起業したら扶養から外れなくちゃいけないの?」という疑問です。
起業当初は売上が少ないと思うので、旦那の扶養から外れちゃうと厳しいかも…。
扶養のままで起業出来たらいいんだけどなぁ~。
実際に、旦那さんの扶養に入っている女性の方から「起業しても扶養の範囲に収めるには、幾らまで稼いでいいんですか?」という質問も多く受けます。
そこで今回は、起業を目指す主婦の方が気になっている「扶養の範囲内の起業」について解説したいと思います。
今回は
・起業したら扶養から外れてしまうの?
・起業しても扶養から外れないためにはどうしたらいいの?
といった疑問を持っている主婦の方に向けて、扶養と起業についてお伝えします。
それではどうぞ!
扶養の範囲:3つの扶養について
まず 「起業したら扶養から外れなくちゃいけないの?」という質問に対する回答ですが、 結論から言うと、条件によっては起業しても扶養のままでいることが可能です。
ただし一言で『扶養』と言っても3種類の扶養があるので、その3つのなかで起業できる場合とできない場合があります。
では3種類の『扶養』とはどのようなものかと言うと・・・
- 税制上の扶養範囲
- 社会保険上の扶養範囲
- 旦那さんの会社の規定の扶養範囲
という3つです。
これらの3つ扶養について以下に詳しく説明しますね。
税制上の扶養の範囲について
税制上の扶養とは、「配偶者控除」「配偶者特別控除」という仕組みに関するもので、所得が無いもしくは所得が低い配偶者がいる場合に税金が安くなるというものです。
ざっくり説明すると、合計所得が 1,000万円以下の旦那さんの場合、奥さんの合計所得が38万円以下(令和2年分以降は48万円以下)であれば、13万~38万円の控除があるので、課税所得が下がるというものです。※詳しくは後ほど説明します
この税制上の扶養は、旦那さんがサラリーマンであっても、公務員やフリーランスであっても使える制度です。
ですから、 あなたの合計所得が38万円以下であれば「扶養の範囲内での起業ができる」ということになります。
社会保険上の扶養の範囲について
社会保険には「健康保険」と「年金」があり、それぞれ扶養の範囲が異なります。
まず、健康保険ですが、旦那さんが大手企業のサラリーマンのような場合は、健康保険組合に加入していると思います。
その場合、その組合ごとに「扶養の範囲」が異なっていて、「年収が130万円未満」とか「所得が130万円まで」あるいは「開業届けを出した人はNG」といった場合もありますので、一概に扶養の範囲が決まっていません。
ですから、旦那さんの会社に確認をしてみることが必要です。
また、旦那さんがフリーランスだったり短時間労働者の場合は国民健康保険に加入していると思いますが、そもそも国民健康保険には「扶養範囲」という概念がありません。
ですから奥さんが起業していようと収入・所得がいくらあっても関係がありません。
次に年金ですが、旦那さんが厚生年金に加入している場合は、奥さんの年収が130万円未満であれば、奥さんは国民年金の「第3号被保険者」となり、自分で国民年金の保険料を納付しなくても良いことになります。
しかし、年収が130万円を超えると「第3号被保険者」から外れますので、あなたの年収が130万円未満であれば「扶養の範囲内でも起業ができる」 ということになります。
旦那さんの会社の規定の扶養範囲
旦那さんが勤めている会社によって、奥さんの収入が規定額以下の場合に家族手当や扶養手当などの支給がある場合があります。
年収が130万円未満という規定のところが多いようですが、会社によってその額は異なりますので、 旦那さんの会社に確認をしてみてください。
起業の種類によっては扶養からはずれなきゃいけない?
収入や所得の金額に関係なく、起業の種類によっては扶養から外れなくてはいけない場合があります。
それは、「会社」を立ち上げた場合は必ず社会保険に加入しなければならないため、原則、社会保険上の扶養からは外れなければなりません。
従業員がゼロで社長が一人の会社であっても社会保険への加入が義務づけられています。
ですから、個人事業主での起業であれば、上記の通り条件によっては扶養の範囲内となりますが、株式会社や合同会社など法人を立ち上げた起業の場合は社会保険上の扶養から外れる必要があるのです。
税制上の扶養の範囲内で稼ぐには
これまで、扶養には3種類あることや、法人で起業した場合は原則的に社会保険の扶養には入れないことをご説明しました。
では、税制に限って扶養の範囲内で稼ぐにはどうしたらよいかをお伝えしたいと思います。
※税制上の扶養の場合は、個人事業でも法人(会社)であっても同じです。 税制と社会保険は連動しないからです
まず上の「税制上の扶養の範囲について」のところで、旦那さんの合計所得が 1,000万円以下の場合、奥さんの合計所得が38万円以下(令和2年分以降は48万円以下)であれば配偶者控除の対象となる、と説明しました。
ここで注意しなければならないのが「合計所得」という言葉です。これは「売上」や「収入」ではありません。
収入から必要経費を引いたものを個人事業主の「事業所得」と言います。
なお、青色申告の承認を受けて確定申告の際に青色申告をすると65万円が控除されます。
売上ー経費ー青色申告特別控除65万円=事業所得 |
そして最終的に合計所得が38万円以下(令和2年分以降は48万円以下 )であれば、所得税は課税されず、「扶養の範囲内」になるという訳です。
例えば、売上が200万円で経費が50万円で、青色申告をした場合は
150万ー50万ー65万=35万円
となり、扶養の範囲内となる訳です。
なお、所得には事業所得以外に「給与所得」や「不動産所得」、「配当所得」、「雑所得」などがあり、それらを合計したものが「合計所得」となります。
それまでパートで働いていて年の途中で起業した場合は、パートのお給料と事業所得を合計する必要があります。
まとめ
一般的に起業してビジネスを始める場合、スタート期は売上が少ない一方で経費はある程度かかるので、旦那さんの扶養に入ったままだと税金や社会保険の支出面で大いに助かります。
「扶養の範囲内で事業をしようなんて甘えてる!」
と怒る人もいるかもしれませんが、実際は扶養の範囲内でパートをしている主婦も多いのが現状ですし、働いて収入を得るという意味では一緒のことです。
そして、制度としてあるものですからそれを賢く利用することは間違っていません。
使える制度は存分に活用して、事業が成長して収入や所得が増えたら扶養から外れて独り立ちしたら良いのです。
最初は扶養の範囲内で事業の体力を温存しておいて、自分の能力を最大限発揮しながら、「扶養の範囲」というハードルを越えてみることで得られることも大きいと思うので、ぜひ頑張ってみてください。
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