経営者になると、仕事に対する責任感もあって、四六時中仕事のことばかり考えていたり、土日祝日だろうが定休日だろうが仕事をしている人が少なくありません。
世の中には『経営者は休まずに働くことが良い』と思う人も多く、なかには『起業した直後は休みを取るなんてもってのほか!』と言う人もいます。
私自身、起業当初に先輩の経営者から「社長たるものは起業したばかりの時期は休まず働くものだ」と言われたことがありますが、当時からそうした言葉にとても違和感を感じていました。
私自身は経営者であろうときちんと休みは取るべきだし、特に家事や育児などを担っている女性であればなおのこと、きちんと休みを取ったほうが良いと思っています。
女性の経営者こそ、率先して休みましょう!
そこで今回は、女性経営者は適切に休みを取りつつ経営をすることの大切さについてお伝えします。
世の経営者はなぜ「休まない」・「休めない」のか
経営者には休まない・休めない人が少なくありません。
では、なぜ多くの経営者は休まない・休めないのでしょうか?
休まない・休めない理由は幾つかあるようです。
古い文化・時代遅れの風習
私の知り合いの経営者に、平日も休日も関係なく働いている人が少なくありません。
そういう経営者の多くが男性で、ある程度年齢が高く、結婚して妻子もいますが、家事や育児、家庭のことは妻に任せている昭和気質な社長です。
とにかく会社を成長させることが最優先で、昼も夜も休みも無く仕事に打ち込んでいる様子には頭が下がる思いがします。
自分が立ち上げた会社は子どものようなものですから、とにかくがむしゃらに年中無休で働いてしまうのでしょう。
しかし、その働き方は長時間勤務が美徳とされていた時代をそのまま引き継いでいます。
本人はやる気が溢れて頑張っているかもしれませんが、それを支える家族や従業員にとっては「困った経営者」と思われている場合もあります。
デジタル技術の活用や効率化が進んでいない場合
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が浸透してきましたが、IoTやクラウド、そしてAI(人工知能)といった進化したデジタル技術を活用することで業務の効率化やコスト低減が格段に進みました。
さらにコロナ禍の影響でテレワークが進み、オンラインでの会議・打ち合わせなども浸透して、通勤や移動の時間・費用も抑えることができるようになっています。
しかしながら、こうしたデジタル技術の活用や業務の効率化が進んでいないと長時間労働になってしまい、経営者も休めない、休まない状態になりがちです。
単純作業や事務などの多くは自動化、IT化が出来る時代になってきていますので、経営者自らが情報収集し、率先して業務改善を提案するようにしていかなければ、いつまでも休めない状態から抜け出せません。
経営が苦しくて働かざるを得ない場合
特に創業当初は売り上げも少ないため、人を雇わずに経営者が率先して仕事に取り組むことも多いので「休みどころではない」となります。
また昨今の経営環境からしても、経費削減をして人を雇わずに自分で働いてなんとかしなくてはならない、といったこともあるでしょう。
ただし、そうした経営方法が身に付いてしまうと、今度は休むことが難しくなってしまいます。
「自分が休んだら売上が下がるのではないか」
「自分が休んだら仕事が回らなくなってしまうのではないか」
「自分が休んだら従業員がサボってしまうのではないか」
こうした不安や疑心暗鬼が生まれると、休みの日でも仕事のことや従業員の働き方が気になってゆっくり休みを取ることができなくなってしまいます。
そして、休みを取らない・休みが少ない状態が当たり前になってしまうのかもしれません。
経営者が休むべき理由:働き方の変化が求められています
昭和の社長が起業した頃は、景気が良く市場も拡大していて、長時間働けば働くだけ売上が伸びる時代でした。
でも今はそういう時代ではありません。
働く人の環境や価値観も変化しているため、効率的に働いて成果を出すことが求められています。
従業員はもちろんですが、経営者も休みをとるべき理由は次の通りです。
身体と心の健康のため
『経営者は身体が資本』と言われるように、経営者にとって身体と心の健康は、事業を継続するために必須の条件です。
しかし、ストレスフルな経営者は、働き詰めで睡眠時間も少ない状態が長期間続くと心身共に疲弊してしまいます。
身体と心の健康は、適度な労働に適度な運動、そして適度な休息から成り立つものですから、休みを適度に取りながら健康を維持することは経営者にとって必要不可欠な行動です。
より良い経営のため
いつも同じ場所で同じように仕事をしているだけでは新たな刺激が少ないため、アイデアが括弧したり考え方が古くなったり硬直化してしまいます。
また、長時間働いて睡眠時間が少なく肉体的・精神的に疲れていると、健康的に問題が生じないまでも不機嫌になり、それが周囲に伝染していくと、働きにくい職場になって生産性が落ちます。
そうした時には休暇を取ってリフレッシュすることで、新しいアイデアが浮かんだり、やる気が復活して柔軟な発想に繋がります。そして、経営者が元気でハツラツとしていれば、従業員や職場全体も活性化します。
従業員・スタッフのため
自分が居なかったら仕事が回らない、仕事が進まない、と思い込んで休みを取らない(取れない)経営者も多いと思いますが、そのような企業は突発的な何かあった時に窮地に陥るかもしれません。
経営者が急に病気になったり、家庭の事情で休みを取らなければならない事態はいつ起こってもおかしくないのですから、普段から情報共有を進めたり権限を委譲したりしておく必要があります。
社員やスタッフも「社長がいるから任せておけば安心」という考えが浸透していると成長がありません。
社長が休暇で居ないとなれば、自分たちでなんとかしなくちゃいけない!となりますから、経営者の休みが従業員の成長を促すことにも繋がります。
また今の時代、多くの若い人はプライベートや休暇を重視していますが、社長が休まず働いていると「休みが取りずらい会社=働きにくい会社」となってしまいます。
しかし経営者が率先して休めば、従業員・スタッフも休みを取りやすくなり、それによって彼らのワークライフバランスの充実に繋がり、生き生きと働けることで「働きやすい会社」となるのです。
自身のワークライフバランスのため
近年、女性が「働き手」として社会に進出し、共働きの世帯が増えていますが、労働時間の短縮はほとんどされていないと言われています。
子どもがいても働き続けたい、やりがいのある仕事を頑張りたい、そう考える女性が長く仕事を続けていくためにも、長時間の労働は改めて、ワーク・ライフ・バランスを重視した働き方へのシフトが必要です。
会社のため、従業員のためだけでなく、経営者自身のワークライフバランスのためにも、適切に休暇を取ることが求められます。
まとめ:働くのが大好きでも適度な休憩が大切
「私は働くことが好きだから長時間働いても苦じゃない!」
「好きな事だから徹夜してもへっちゃらだし、お休みなんていらない!」
たまにそんな女性にお目に掛かります。
仕事は大好きだから長時間働くのも嫌じゃないし、逆に楽しいと思うタイプの人です。
でも、本当に好きだからと言ってずっと働いているのは良い事なのでしょうか。
もちろん、独身の女性が一人で起業して従業員が居ないような場合はそれでも良いかもしれませんが、家庭があったり、従業員がいるような会社を経営している場合は、そうした考え方は違うと思います。
いくら好きな事であっても、長時間同じことを繰り返し続けると集中力が欠けたり、パフォーマンスが低下していきます。
特に脳は、ずっと働き続けるとストレスが溜まって働きが悪くなると言われていますから、適度な休憩や気分転換はリフレッシュするのに必要なことです。
働き詰めで体調不良になったりしたら本末転倒ですし、家庭がある場合は家族との時間を持つことも大切です。
「家庭も顧みずに長時間がむしゃらに働くことが美徳」という男性中心の時代は終わり、女性でも「自分のスタイルで休暇も適度に取りながらしなやかに経営をする」という時代に変わっています。
テレワークやワーケーションなどの新しい働き方も定着しつつありますので、ぜひ自分らしい、自分にあった働き方を見つけてみてください。
1年以内に起業を目指す女性や起業して約1年以内の方を対象に「きちんと稼げる」ことをテーマにした個別のコンサルティングを行っています。